したがって、1ドル150円、場合によったら160円の方向に進むと私は見ている。
少なくとも目先としてはそういう方向である。
ただし、これがどこまでいくのかは、わからない。
何がきっかけとなって下降に転じるかわからないかドルの危機は世界の脅威を指摘をするエコノミストもいるが、ドルがどうなるかというあまりにも大きなテーマからすれば、それは小さな問題だということもできると思う。
というより、そんなことは言っていられない。
それに、端的に言って、円が下がっても日本経済にはたいした問題は起きない。
なぜかといえば、日本のように黒字の大きな国の通貨が下がっても、マイナスは少ないからだ。
円が下がれば輸出産業にとってはプラス、逆に輸入産業にはマイナスとなるが、輸出と輸入では圧倒的に輸出の方が大きい。
だから、プラスの方が大きいのである。
円は安くなればなるほど、われわれにとって有利。
景気にもプラスである。
だからいまは、為替相場にたいへん助けられているということができるわけだ。
しかし、これがいつまでも続くかといえば、続けられないだろう。
なぜかというと、アメリカがまいっているからだ。
アメリカはまったく逆で、輸入超過で赤字が大きい。
そして、為替相場でこんなにもドルが強かったら、とてもじゃないがこの赤字は縮小できない。
その結果、借金が急激に膨らんでいる。
この借金がやがて命取りになりかねない。
仮にドルこれは、たいへん恐ろしいことである。
全世界にとって、脅威だ。
持ってるものの値うちが半分になったら、みんな大慌てで売り急ぐ。
売られるものが大量にあるだけに、収拾がつかない。
そのとき、政府にどうにかしてくれと泣きついても、それは無理。
インドネシア一国の危機なら、世界が集まって救済策を講じることもできるだろうが、ドルの危機という事態になったら、どこの国の政府にも打つ手などない。
それに、ビッグバンの大原則は「自己責任」。
誰も救済はできないのである。
それだけに政府高官は、恐くて発言できない。
いつそれが引き金になるかわからないからだ。
「ドルは強い、アメリカ経済はいい」と言い続けるよりほかない。
あまりにも高い煙突のてっぺんに登った人は、もう降りられない。
上がりつづけるしかないのである。
ドルが暴落すれば当然のことながら全世界の経済に大打撃を与える。
日本の景気も一気に悪化する。
円が下がってアジア経済がどうなるかという問題が下がっても、下がる割には赤字の縮小は進まないということもつけ加えておこう。
だから、たいへんな問題を世界は抱えている、ということだ。
日本の政策に関してマーケットが「失望売り」をしているとの指摘がよくされるが、為替を動かすディーラーたちは、常に何か材料を探しているものである。
上がっても下がっても、それで儲かるしくみになっているからだ。
だから「H首相が辞めるかどうか」というのは、市場にとって、ディーラーにとっては非常に重要なことである。
しかし彼らは、「明日のことはわからない」というほど短い時間の勝負に生きている。
そういう世界なのだ。
一般の方々がそれに振り回されてはよくないと私は思っている。
「1日以上先のことはどうでもいい」という人たちと同じ目線でものを見ない方がよいのではないだろうか。
そうでないと、本当に重要な問題を見逃してしまう。
このことをどうか読者には理解してほしいと思う。
H首相が辞めれば景気がよくなるなんて、いまの日本経済は、そんな簡単な状態ではない。
アメリカが大量にモノを買って助けてくれているから、こんなに輸出もできて何とかもちこたえているのだ。
アメリヵヘの信頼感が世界にあって、どんどんドルが買われ、ドルが高い状態が続いているから、日本も助かっているわけだ。
日本の政府も景気への後押しを懸命にやっている。
莫大なおカネを政府が供給しているおかげで、日本経済はかろうじてもっている。
しかし、永遠には続かないだろう。
いつかはドルの正常化の局面が来る。
それをぜひ頭に入れておいてほしい。
政府・大蔵省がなんとか円安に歯止めをかけたいのは、日本の株価下落を阻止するため、との側面がある。
国内経済の悪化だけでも株式市場には負担となっているところへ、為替が円安になれば、ドル・ベースの株価は一段と低下するから、外人投資家の売りが高まる、との懸念があるためだ。
実際、この1〜2年の動きをみると株と為替の連動性が著しい。
つまり、円が安くなる時には株も下げており、逆に株が上昇する場面では円も上昇するケースが多い。
こうした株と為替の連鎖は最近になってのことで、その前は円高になると株価が下落するというように、今とは逆方向に為替が株価を左右する傾向があった。
ついでに言えば、バブルが弾けるまでは円安になると株が下がり、円高が進む時には株も上昇するのが一般的であった。
結果だけ見ると現在の状況と似ているが、明らかに違う点が二つ。
円と株が連鎖的に値を下げる「日本売り」は、なぜ起こるのか。
「日本株式会社」の抱えた問題点を指摘しつつ、これからのシナリオを読む。
では最近の円と株の連鎖安がなぜ生じているのか、その構図を解き明かしてみよう。
アジアや新興市場の中には、経常収支が大幅な赤字となり、為替が下落して対外債務の膨張が経済に負担となり、株も下げている国が少なくない。
しかし、今日の日本は年間9兆円にものぼる世界に冠たる経常黒字国であり、それが積もり積もって100兆円以上という世界一の対外純債権を持つ国である。
その限りにおいては、円が売られる筋合いはない。
ところが、実際には年間9兆円もの経常黒字からある。
一つは、かつては圧倒的に円高、株高が長く、時に円安で株が下がる事態が散見された。
これに対し、今日は基本的には円安、株安が続いている。
二つには、かつては好調な日本経済の中で、円安が生じるとインフレ懸念、金利上昇懸念で株が下げたのだが、今日ではインフレも金利上昇も考えにくい。
にもかかわらず、「日本売り」の形で円と株が同時に、あるいは連鎖的に売られるのが一般的になっている。
「円・株連鎖安」の構図を解くも目減りして未だに下げ止まっていない。
両者を合わせると、1200兆円もの資産を失ってしまったことになるが、これは年間GDP(約500兆円)が2年半分も消失したようなものだ。
それだけならまだよい。
問題は「日本株式会社」の資産が大規模な収縮をみせるなかで、負債の方はバブル期に膨らんだままで、資産と負債との間に大きな歪みが生じてしまった。
つまり、資産価値に比べ、負債が過大になってしまったことになる。
だから企業も個人もせっせと償却、返済に精を出す。
その償却原資は毎期の稼ぎから捻出されるが、その稼ぎを日本全体で集大成したものがGDPになる。
GDPという形で産出された所得は、個人や政府によって大半が消費され、残りを貯蓄に回すが、その貯蓄は企業や政府の投資に使われる。
ところが、90年頃から大きく歪んだ資産と負債のギャップを埋めるべく、企業も個人も従来以上に償却や返済という形で貯蓄に励み、投資や消費を抑制するようになった。
だから投資では使いきれない民間での「余剰貯蓄」が、多い時にはGDPの80%(現在の経済規模で言えば、年間90兆円ほど)も発生。
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